第1回学会印象記

第1回日本線維筋痛症学会の印象記

日本線維筋痛症学会
事務局長 岡  寛
(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター 副センター長)

行岡病院院長の行岡正雄先生が記念すべき第1回の学会長となり、日本線維筋痛症学会が平成21年10月11日(日)と12日(祝)の2日間、大阪の商工会議所にて開催された。これまで線維筋痛症(FM)研究会という名称で過去2回が行われたが、今回は学会となったこと、また会長のすばらしいご企画により、一挙に倍以上に相当する400名以上の参加者があった。

 プログラムは、教育講演、特別講演、特別企画、スポンサードシンポジウム、一般演題、市民公開講座という2日間休む間もないような沢山の企画であった。教育講演では、当学会の理事長の西岡先生から「線維筋痛症診療ガイドライン2009」の解説があった。この講演では、約3,500名のデータベースの分析からなる臨床のクラスター分類別の治療法が提唱され、また世界初の小児のFMの診断基準も紹介された。また、特別講演として兵庫医大の野口教授より、「炎症性疼痛のメカニズム」という最新の痛みのTRPファミリーに関する研究のお話があった。スポンサードシンポジウムでは、Pain Vision?によって痛みを定量化することができ、筆者らはFMにおいて特に痛み度が高いことを示した。

 一般演題は、37演題であったが、大変興味深い演題が数多く見られた。北星病院の今野孝彦先生は、難治性のFMに対するトラマドールシロップの著明な効果を紹介された。藤田保健衛生大学の松本美富士先生は、プラマリーケアレベルにおけるFM認知度第2回調査の結果を報告された。この報告では、5年前の第1回の調査ではFMの認知度が32.2%であったが、今回の調査では、50.6%と半数以上がFMを認知しており、FM診療の進歩が明確に示された。また、看護師として参加された横浜市立大学の笹野優子先生は、小児FMの治療例は実際の動画を示され、母子分離や患児との関わりの重要性を我々に投げかけていただいた印象深いご発表であった。

 会員懇親会では、行岡病院のスタッフの方々による格調高いクラシック音楽の演奏があり、手作りの懇親会で会場全体が盛り上がっていた。

 2日目の最後には、患者さん向けに市民公開講座が行われた。講演は、前述の松本美富士先生、日本大学附属板橋病院心療内科の村上正人先生に加えて順天堂大学精神医学教室の臼井千恵先生が担当され、特に臼井先生は、FMの現在の治療は精神科領域の薬剤が主であり、もっと精神科の先生にも診てもらいましょうという主旨のご発表であり、大変参考になった。

 この学会で感じたことは、とてもバランスがとれている学会であった。医師のみでなく、パラメディカルの方が多く参加、発表されていたこと、学会期間中に患者さんが参加できる公開講座があったこと、基礎研究から臨床や看護まで幅広い内容が網羅されていたことなど大変すばらしい学会であった。

 来年度は、11月13日と14日に東京で前述の村上正人先生が学会長として、第2回の学会が開催される予定であり、今から楽しみである。